身上の便宜も充分計ってやるし、気に障《さ》わるような事もやめてやる。しかし向が向ならこっちもこっちと云う気になるからな――つまりそんな我《が》を張るのは当人の損だからな」
「ええ全くおっしゃる通り愚《ぐ》な抵抗をするのは本人の損になるばかりで何の益もない事ですから、善く申し聞けましょう」
「それから娘はいろいろと申し込もある事だから、必ず水島にやると極《き》める訳にも行かんが、だんだん聞いて見ると学問も人物も悪くもないようだから、もし当人が勉強して近い内に博士にでもなったらあるいはもらう事が出来るかも知れんくらいはそれとなくほのめかしても構わん」
「そう云ってやったら当人も励《はげ》みになって勉強する事でしょう。宜《よろ》しゅうございます」
「それから、あの妙な事だが――水島にも似合わん事だと思うが、あの変物《へんぶつ》の苦沙弥を先生先生と云って苦沙弥の云う事は大抵聞く様子だから困る。なにそりゃ何も水島に限る訳では無論ないのだから苦沙弥が何と云って邪魔をしようと、わしの方は別に差支《さしつか》えもせんが……」
「水島さんが可哀そうですからね」と鼻子夫人が口を出す。
「水島と云う人には逢
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