…」と鮪《まぐろ》の刺身を食う時のごとく禿頭《はげあたま》をぴちゃぴちゃ叩《たた》く。もっとも吾輩は椽《えん》の下にいるから実際叩いたか叩かないか見えようはずがないが、この禿頭の音は近来|大分《だいぶ》聞馴れている。比丘尼《びくに》が木魚の音を聞き分けるごとく、椽の下からでも音さえたしかであればすぐ禿頭だなと出所《しゅっしょ》を鑑定する事が出来る。「そこでちょっと君を煩《わずら》わしたいと思ってな……」
「私に出来ます事なら何でも御遠慮なくどうか――今度東京勤務と云う事になりましたのも全くいろいろ御心配を掛けた結果にほかならん訳でありますから」と御客さんは快よく金田君の依頼を承諾する。この口調《くちょう》で見るとこの御客さんはやはり金田君の世話になる人と見える。いやだんだん事件が面白く発展してくるな、今日はあまり天気が宜《い》いので、来る気もなしに来たのであるが、こう云う好材料を得《え》ようとは全く思い掛《が》けなんだ。御彼岸《おひがん》にお寺詣《てらまい》りをして偶然|方丈《ほうじょう》で牡丹餅《ぼたもち》の御馳走になるような者だ。金田君はどんな事を客人に依頼するかなと、椽の下から耳
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