って団栗のスタビリチーを論じて併せて天体の運行に及ぶ[#「団栗のスタビリチーを論じて併せて天体の運行に及ぶ」に傍点]と云う論文を書いた事があります」「団栗《どんぐり》なんぞでも大学校で勉強するものでしょうか」「さあ僕も素人《しろうと》だからよく分らんが、何しろ、寒月君がやるくらいなんだから、研究する価値があると見えますな」と迷亭はすまして冷かす。鼻子は学問上の質問は手に合わんと断念したものと見えて、今度は話題を転ずる。「御話は違いますが――この御正月に椎茸sしいたけ》を食べて前歯を二枚折ったそうじゃございませんか」「ええその欠けたところに空也餅《くうやもち》がくっ付いていましてね」と迷亭はこの質問こそ吾|縄張内《なわばりうち》だと急に浮かれ出す。「色気のない人じゃございませんか、何だって楊子《ようじ》を使わないんでしょう」「今度|逢《あ》ったら注意しておきましょう」と主人がくすくす笑う。「椎茸で歯がかけるくらいじゃ、よほど歯の性《しょう》が悪いと思われますが、如何《いかが》なものでしょう」「善いとは言われますまいな――ねえ迷亭」「善い事はないがちょっと愛嬌《あいきょう》があるよ。あれぎ
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