はピヤース・プローマンの中には仮令《たとい》兇漢でも二度|絞《し》める法はないと云う句があるのです。まあどっちが本当か知りませんが、悪くすると一度で死ねない事が往々実例にあるので。千七百八十六年に有名なフ※[#小書き片仮名ヒ、1−6−84]ツ・ゼラルドと云う悪漢を絞めた事がありました。ところが妙なはずみで一度目には台から飛び降りるときに縄が切れてしまったのです。またやり直すと今度は縄が長過ぎて足が地面へ着いたのでやはり死ねなかったのです。とうとう三返目に見物人が手伝って往生《おうじょう》さしたと云う話しです」「やれやれ」と迷亭はこんなところへくると急に元気が出る。「本当に死に損《ぞこな》いだな」と主人まで浮かれ出す。「まだ面白い事があります首を縊《くく》ると背《せい》が一寸《いっすん》ばかり延びるそうです。これはたしかに医者が計って見たのだから間違はありません」「それは新工夫だね、どうだい苦沙弥《くしゃみ》などはちと釣って貰っちゃあ、一寸延びたら人間並になるかも知れないぜ」と迷亭が主人の方を向くと、主人は案外真面目で「寒月君、一寸くらい背《せい》が延びて生き返る事があるだろうか」と聞く
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