E《くつぬぎ》へ降りる事も出来ない。ああ気の毒だ気の毒だと思うとなお悪寒がしてなお眼がくらんでくる。早く医者に見てもらって服薬でもしたら四時前には全快するだろうと、それから細君と相談をして甘木《あまき》医学士を迎いにやると生憎《あいにく》昨夜《ゆうべ》が当番でまだ大学から帰らない。二時頃には御帰りになりますから、帰り次第すぐ上げますと云う返事である。困ったなあ、今|杏仁水《きょうにんすい》でも飲めば四時前にはきっと癒《なお》るに極《きま》っているんだが、運の悪い時には何事も思うように行かんもので、たまさか妻君の喜ぶ笑顔を見て楽もうと云う予算も、がらりと外《はず》れそうになって来る。細君は恨《うら》めしい顔付をして、到底《とうてい》いらっしゃれませんかと聞く。行くよ必ず行くよ。四時までにはきっと直って見せるから安心しているがいい。早く顔でも洗って着物でも着換えて待っているがいい、と口では云ったようなものの胸中は無限の感慨である。悪寒はますます劇《はげ》しくなる、眼はいよいよぐらぐらする。もしや四時までに全快して約束を履行《りこう》する事が出来なかったら、気の狭い女の事だから何をするかも知
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