》に帰ってから云う。
「奇麗にもならんじゃないかって、阿爺《おとっ》さん、こりゃ五分刈《ごぶがり》じゃないですぜ」
「じゃ何刈だい」
「分けるんです」
「分かっていないじゃないか」
「今に分かるようになるんです。真中が少し長いでしょう」
「そう云えば心持長いかな。廃《よ》せばいいのに、見っともない」
「見っともないですか」
「それにこれから夏向は熱苦しくって……」
「ところがいくら熱苦しくっても、こうして置かないと不都合なんです」
「なぜ」
「なぜでも不都合なんです」
「妙な奴だな」
「ハハハハ実はね、阿爺さん」
「うん」
「外交官の試験に及第してね」
「及第したか。そりゃそりゃ。そうか。そんなら早くそう云えば好いのに」
「まあ頭でも拵《こしら》えてからにしようと思って」
「頭なんぞはどうでも好いさ」
「ところが五分刈で外国へ行くと懲役人と間違えられるって云いますからね」
「外国へ――外国へ行くのかい。いつ」
「まあこの髪が延びて小野清三式になる時分でしょう」
「じゃ、まだ一ヵ月くらいはあるな」
「ええ、そのくらいはあります」
「一ヵ月あるならまあ安心だ。立つ前にゆっくり相談も出来るか
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