地ならししたる上に、稲妻《いなずま》の穂は一を引いて虚空を走った。二を引いて上から落ちて来た。卍《まんじ》を描《えが》いて花火のごとく地に近く廻転した。最後に穂先を逆に返して帝座《ていざ》の真中を貫けとばかり抛《な》げ上げた。かくして塔は棟《むね》に入り、棟は床《とこ》に連《つら》なって、不忍《しのばず》の池《いけ》の、此方《こなた》から見渡す向《むこう》を、右から左へ隙間《すきま》なく埋めて、大いなる火の絵図面が出来た。
藍《あい》を含む黒塗に、金を惜まぬ高蒔絵《たかまきえ》は堂を描き、楼を描き、廻廊を描き、曲欄《きょくらん》を描き、円塔方柱《えんとうほうちゅう》の数々を描き尽して、なお余りあるを是非に用い切らんために、描ける上を往きつ戻りつする。縦横に空《くう》を走る※[#「陷のつくり+炎」、第3水準1−87−64]の線は一点一劃を乱すことなく整然として一点一劃のうちに活きている。動いている。しかも明かに動いて、動く限りは形を崩《くず》す気色《けしき》が見えぬ。
「あの横に見えるのは何」と糸子が聞く。
「あれが外国館。ちょうど正面に見える。ここから見るのが一番奇麗だ。あの左にある
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