エクスを平げつつある。
「おいいたぜ」と宗近君が云う。
「うんいた」と甲野さんは献立表《メヌー》を眺《なが》めながら答える。
「いよいよ東京へ行くと見える。昨夕《ゆうべ》京都の停車場《ステーション》では逢わなかったようだね」
「いいや、ちっとも気がつかなかった」
「隣りに乗ってるとは僕も知らなかった。――どうも善く逢うね」
「少し逢い過ぎるよ。――このハムはまるで膏《あぶら》ばかりだ。君のも同様かい」
「まあ似たもんだ。君と僕の違ぐらいなところかな」と宗近君は肉刺《フォーク》を逆《さかしま》にして大きな切身を口へ突き込む。
「御互に豚をもって自任しているのかなあ」と甲野さんは、少々|情《なさ》けなさそうに白い膏味《あぶらみ》を頬張《ほおば》る。
「豚でもいいが、どうも不思議だよ」
「猶太人《ユデアじん》は豚を食わんそうだね」と甲野さんは突然超然たる事を云う。
「猶太人《ユデアじん》はともかくも、あの女がさ。少し不思議だよ」
「あんまり逢うからかい」
「うん。――給仕《ボーイ》紅茶を持って来い」
「僕はコフィーを飲む。この豚は駄目だ」と甲野さんはまた女を外《はず》してしまう。
「これで何
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