る二人の世界が、細長い夜《よ》を糸のごとく照らして動く電灯の下《もと》にあらわれて来る。
 色白く、傾く月の影に生れて小夜《さよ》と云う。母なきを、つづまやかに暮らす親一人子一人の京の住居《すまい》に、盂蘭盆《うらぼん》の灯籠《とうろう》を掛けてより五遍になる。今年の秋は久し振で、亡き母の精霊《しょうりょう》を、東京の苧殻《おがら》で迎える事と、長袖の右左に開くなかから、白い手を尋常に重ねている。物の憐れは小さき人の肩にあつまる。乗《の》し掛《かか》る怒《いかり》は、撫《な》で下《おろ》す絹しなやかに情《なさけ》の裾《すそ》に滑《すべ》り込む。
 紫に驕《おご》るものは招く、黄に深く情濃きものは追う。東西の春は二百里の鉄路に連《つら》なるを、願の糸の一筋に、恋こそ誠なれと、髪に掛けたる丈長《たけなが》を顫《ふる》わせながら、長き夜を縫うて走る。古き五年は夢である。ただ滴《した》たる絵筆の勢に、うやむやを貫いて赫《かっ》と染めつけられた昔の夢は、深く記憶の底に透《とお》って、当時《そのかみ》を裏返す折々にさえ鮮《あざや》かに煮染《にじ》んで見える。小夜子の夢は命よりも明かである。小夜子は
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