|克《こく》復の暁《あかつき》には、百の広瀬中佐も全くの凡人に過ぎない。世間は隣人《りんじん》に対して現金《げんきん》である如く、英雄《ヒーロー》に対しても現金である。だから、斯《か》う云ふ偶像にも亦常に新陳代謝や生存競争が行はれてゐる。さう云ふ訳で、代助は英雄《ヒーロー》なぞに担《かつ》がれたい了見は更にない。が、もし茲に野心があり覇気のある快男子があるとすれば、一時的の剣《けん》の力よりも、永久的の筆の力で、英雄《ヒーロー》になつた方が長持《ながもち》がする。新聞は其方面の代表的事業である。
代助は此所《こゝ》迄|述《の》べて見たが、元来が御世辞の上《うへ》に、云ふ事があまり書生らしいので、自分の内心には多少滑稽に取れる位、気が乗らなかつた。平岡は其返事に、
「いや難有う」と云つた丈であつた。別段腹を立てた様子も見えなかつたが、些《ちつ》とも感激してゐないのは、此返事でも明かであつた。
代助は少々平岡を低く見過ぎたのに恥《は》ぢ入つた。実は此側《このがは》から、彼《かれ》の心を動《うご》かして、旨《うま》く油《あぶら》の乗《の》つた所を、中途から転《ころ》がして、元《もと》の家
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