《たづ》ねる気であつた。から何時《いつ》もの様に川辺《かはべり》を伝《つた》はないで、すぐ橋《はし》を渡《わた》つて、金剛寺坂《こんごうじざか》を上《あが》つた。
 実を云ふと、代助はそれから三千代にも平岡にも二三遍逢つてゐた。一遍は平岡から比較的長い手紙を受取つた時であつた。それには、第一に着京以来御世話になつて難有いと云ふ礼が述べてあつた。それから、――其後《そのご》色々朋友や先輩の尽力を辱うしたが、近頃ある知人の周旋で、某新聞の経済部の主任記者にならぬかとの勧誘を受けた。自分も遣《や》つて見たい様な気がする。然し着京の当時君に御依頼をした事もあるから、無断では宜《よろ》しくあるまいと思つて、一応御相談をすると云ふ意味が後《あと》に書いてあつた。代助は、其当時《そのとうじ》平岡から、兄《あに》の会社に周旋してくれと依頼されたのを、其儘にして、断わりもせず今日《こんにち》迄|放《ほう》つて置いた。ので、其返事を促《うな》がされたのだと受取つた。一通の手紙で謝絶するのも、あまり冷淡|過《すぎ》ると云ふ考もあつたので、翌日《よくじつ》出《で》向いて行《い》つて、色々|兄《あに》の方の事情
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