円は、代助から受取《うけと》るとすぐ借銭《しやくせん》の方へ回《まは》す筈《はず》であつたが、新《あた》らしく家《うち》を持《も》つた為《ため》、色々《いろ/\》入費が掛《かゝ》つたので、つい其方の用を、あのうちで幾分か弁《べん》じたのが始《はじま》りであつた。あとはと思つてゐると、今度《こんど》は毎日の活計《くらし》に追《お》はれ出《だ》した。自分ながら好《い》い心持《こゝろもち》はしなかつたけれども、仕方《しかた》なしに困《こま》るとは使《つか》ひ、困《こま》るとは使《つかひ》して、とう/\荒増《あらまし》亡《な》くして仕舞つた。尤もさうでもしなければ、夫婦は今日《こんにち》迄|斯《か》うして暮《く》らしては行《い》けなかつたのである。今から考へて見ると、一層《いつそ》の事|無《な》ければ無《な》いなりに、何《ど》うか斯《か》うか工面《くめん》も付《つ》いたかも知れないが、なまじい、手元《てもと》に有《あ》つたものだから、苦《くる》し紛《まぎ》れに、急場《きうば》の間《ま》に合《あ》はして仕舞つたので、肝心の証書を入れた借銭《しやくせん》の方は、いまだに其儘にしてある。是は寧《むし
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