》に対《たい》する様に、たゞ苦笑《くしやう》ばかりしてはゐられなかつた。
「別《べつ》にそんな貰ひたいのもありません」と明《あき》らかな返事をした。すると父《ちゝ》は急に肝の発した様な声で、
「ぢや、少《すこ》しは此方《こつち》の事も考へて呉れたら好《よ》からう。何もさう自分の事ばかり思つてゐないでも」と急調子に云つた。代助は、突然|父《ちゝ》が代助を離れて、彼《かれ》自身の利害に飛び移つたのに驚ろかされた。けれども其驚ろきは、論理なき急劇の変化の上《うへ》に注《そゝ》がれた丈であつた。
「貴方《あなた》にそれ程御都合が好《い》い事があるなら、もう一遍考へて見ませう」と答へた。
父は益機嫌をわるくした。代助は人と応対してゐる時、何《ど》うしても論理を離れる事の出来ない場合がある。夫《それ》が為《た》め、よく人《ひと》から、相手を遣《や》り込めるのを目的とする様に受取られる。実際を云ふと、彼《かれ》程人を遣《や》り込める事の嫌な男はないのである。
「何も己《おれ》の都合|許《ばかり》で、嫁《よめ》を貰へと云つてやしない」と父《ちゝ》は前《まへ》の言葉を訂正した。「そんなに理窟を云ふなら
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