ん》ちきりんな家《うち》へ這入《はいつ》てますからね」と門野《かどの》はすぐあとを付けた。
 代助は返事も為《し》ずに書斎へ引き返した。椽側に垂《た》れた君子|蘭《らん》の緑《みどり》の滴《したゝり》がどろ/\になつて、干上《ひあが》り掛《かゝ》つてゐた。代助はわざと、書斎と座敷《ざしき》の仕切《しきり》を立《た》て切《き》つて、一人《ひとり》室《へや》のうちへ這入《はい》つた。来客に接《せつ》した後《あと》しばらくは、独坐《どくざ》に耽《ふけ》るが代助の癖《くせ》であつた。ことに今日《けふ》の様に調子の狂ふ時は、格別その必要を感じた。
 平岡はとう/\自分と離れて仕舞つた。逢《あ》ふたんびに、遠くにゐて応対する様な気がする。実を云ふと、平岡ばかりではない。誰《だれ》に逢つても左《そ》んな気がする。現代の社会は孤立した人間の集合体に過《すぎ》なかつた。大地《だいち》は自然に続《つゞ》いてゐるけれども、其上に家《いへ》を建《た》てたら、忽ち切《き》れ|/\《ぎれ》になつて仕舞つた。家《いへ》の中《なか》にゐる人間《にんげん》も亦|切《き》れ切《ぎ》れになつて仕舞つた。文明は我等をして孤立
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