》は東京を去つた。国に居《ゐ》た父《ちゝ》は思はざるある事情の為《ため》に余儀なくされて、是も亦北海道へ行つて仕舞つた。三千代《みちよ》は何方《どつち》かと云へば、今《いま》心細い境遇に居る。どうかして、此東京に落付《おちつ》いてゐられる様にして遣《や》りたい気がする。代助はもう一返|嫂《あによめ》に相談して、此間《このあひだ》の金《かね》を調達する工面をして見やうかと思つた。又|三千代《みちよ》に逢つて、もう少し立ち入つた事情を委《くわ》しく聞いて見やうかと思つた。
七の三
けれども、平岡へ行つた所で、三千代が無暗に洗《あら》ひ浚《ざら》い※[#「口+堯」、112−13]舌《しやべ》り散《ち》らす女ではなし、よしんば何《ど》うして、そんな金《かね》が要《い》る様になつたかの事情を、詳しく聞《き》き得たにした所で、夫婦《ふうふ》の腹《はら》の中《なか》なんぞは容易に探《さぐ》られる訳のものではない。――代助の心の底を能く見詰めてゐると、彼《かれ》の本当に知りたい点は、却つて此所《こゝ》に在ると、自から承認しなければならなくなる。だから正直を云ふと、何故《なにゆへ》に
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