錆《さび》た鉄《てつ》の様に、頗《すこぶ》る異《あや》しい色《いろ》をしてゐた。其《その》一本は殆んど枯《か》れ掛《か》かつて、上《うへ》の方には丸裸《まるはだか》の骨許《ほねばかり》残つた所に、夕方《ゆふがた》になると烏が沢山集まつて鳴いてゐた。隣には若《わか》い画家《ゑかき》が住《す》んでゐた。車《くるま》もあまり通らない細い横町で、至極閑静な住居《すまゐ》であつた。
代助は其所《そこ》へ能《よ》く遊びに行《い》つた。始めて三千代《みちよ》に逢《あ》つた時、三千代はたゞ御辞儀をした丈で引込んで仕舞つた。代助は上野の森を評して帰つて来《き》た。二返行つても、三返行つても、三千代はたゞ御茶を持《も》つて出《で》る丈であつた。其|癖《くせ》狭い家《うち》だから、隣《となり》の室《へや》にゐるより外はなかつた。代助は菅沼と話《はな》しながら、隣《となり》の室《へや》に三千代がゐて、自分の話を聴いてゐるといふ自覚を去る訳に行《ゆ》かなかつた。
三千代《みちよ》と口《くち》を利《き》き出《だ》したのは、どんな機会《はづみ》であつたか、今では代助の記憶に残つてゐない。残つて居《ゐ》ない程、瑣
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