へ呼んで、話をするのが不愉快であつた。已《や》むなくんば、蒼《あを》い空《そら》の下《した》と思つてゐたが、此天気では夫《それ》も覚束なかつた。と云つて、平岡の家《いへ》へ出向《でむ》く気は始めから無《な》かつた。彼は何《ど》うしても、三千代を自分の宅《うち》へ連《つ》れて来《く》るより外《ほか》に道はないと極《き》めた。門野《かどの》が少し邪魔になるが、話《はなし》のし具合では書生部屋に洩れない様にも出来《でき》ると考へた。
午《ひる》少《すこ》し前《まへ》迄は、ぼんやり雨《あめ》を眺《なが》めてゐた。午飯《ひるめし》を済《す》ますや否や、護謨《ごむ》の合羽《かつぱ》を引き掛けて表へ出た。降《ふ》る中《なか》を神楽坂下《かぐらざかした》迄|来《き》て青山《あをやま》の宅《うち》へ電話を掛《か》けた。明日《あす》此方《こつち》から行く積《つもり》であるからと、機先《きせん》を制して置《お》いた。電話|口《ぐち》へは嫂《あによめ》が現《あらは》れた。先達《せんだつ》ての事は、まだ父《ちゝ》に話《はな》さないでゐるから、もう一遍よく考《かんが》へ直して御覧なさらないかと云はれた。代助は感謝の辞と共に号鈴《ベル》を鳴《な》らして談話を切つた。次に平岡の新聞社の番号を呼んで、彼《かれ》の出社の有無を確《たしか》めた。平岡は社《しや》に出《で》てゐると云ふ返事を得た。代助は雨《あめ》を衝《つ》いて又|坂《さか》を上《のぼ》つた。花屋《はなや》へ這入つて、大きな白百合《しろゆり》の花《はな》を沢山|買《か》つて、夫《それ》を提《さ》げて、宅《うち》へ帰《かへ》つた。花《はな》は濡《ぬ》れた儘、二《ふた》つの花瓶《くわへい》に分《わ》けて挿《さ》した。まだ余《あま》つてゐるのを、此間《このあひだ》の鉢《はち》に水《みづ》を張《は》つて置いて、茎《くき》を短かく切つて、はぱ/\放《ほう》り込んだ。それから、机に向つて、三千代へ手紙を書《か》いた。文句は極《きわ》めて短かいものであつた。たゞ至急御目に掛《かゝ》つて、御話《おはな》ししたい事があるから来《き》て呉れろと云ふ丈であつた。
代助は手を打《う》つて、門野《かどの》を呼《よ》んだ。門野《かどの》は鼻《はな》を鳴らして現《あらは》れた。手紙を受取りながら、
「大変|好《い》い香《にほひ》ですな」と云つた。代助は、
「車《くる
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