にと言訳を付け加へた。
「それは、私《わたくし》も承知してゐますわ。けれども、困《こま》つて、何《ど》うする事も出来《でき》ないものだから。つい無理を御願して」と三千代は気の毒さうに詫《わび》を述べた。代助はそこで念を押した。
「夫《それ》丈で、何《ど》うか始末が付《つ》きますか。もし何《ど》うしても付《つ》かなければ、もう一遍|工面《くめん》して見るんだが」
「もう一遍《いつぺん》工面するつて」
「判を押《お》して高い利のつく御金《おかね》を借《か》りるんです」
「あら、そんな事を」と三千代はすぐ打ち消《け》す様に云つた。「それこそ大変よ。貴方《あなた》」
 代助は平岡の今苦しめられてゐるのも、其起りは、性質《たち》の悪《わる》い金《かね》を借《か》り始めたのが転々《てん/\》して祟つてゐるんだと云ふ事を聞《き》いた。平岡は、あの地で、最初のうちは、非常な勤勉家として通《とほ》つてゐたのだが、三千代が産後《さんご》心臓が悪《わる》くなつて、ぶら/\し出《だ》すと、遊び始めたのである。それも初めのうちは、夫程《それほど》烈しくもなかつたので、三千代はたゞ交際《つきあひ》上|已《やむ》を得ないんだらうと諦《あきら》めてゐたが、仕舞にはそれが段々|高《かう》じて、程度《ほうづ》が無くなる許なので三千代も心配をする。すれば身体《からだ》が悪《わる》くなる。なれば放蕩が猶募る。不親切なんぢやない。私《わたくし》が悪《わる》いんですと三千代はわざ/\断わつた。けれども又淋しい顔《かほ》をして、責《せ》めて小供でも生きてゐて呉れたら嘸《さぞ》可《よ》かつたらうと、つく/″\考へた事もありましたと自白した。
 代助は経済問題の裏面に潜んでゐる、夫婦の関係をあらまし推察し得た様な気がしたので、あまり多く此方《こつち》から問《と》ふのを控えた。帰りがけに、
「そんなに弱《よは》つちや不可《いけ》ない。昔《むかし》の様に元気に御成《おな》んなさい。さうして些《ちつ》と遊びに御|出《いで》なさい」と勇気をつけた。
「本当《ほんと》ね」と三千代は笑つた。彼等は互《たがひ》の昔《むかし》を互《たがひ》の顔《かほ》の上《うへ》に認めた。平岡はとう/\帰つて来《こ》なかつた。

       八の五

 中二日《なかふつか》置《お》いて、突然平岡が来《き》た。其|日《ひ》は乾いた風《かぜ》が朗《
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