の心を握り締めに来るその不可思議な恐ろしい力は、私の活動をあらゆる方面で食い留めながら、死の道だけを自由に私のために開けておくのです。動かずにいればともかくも、少しでも動く以上は、その道を歩いて進まなければ私には進みようがなくなったのです。
私は今日《こんにち》に至るまですでに二、三度運命の導いて行く最も楽な方向へ進もうとした事があります。しかし私はいつでも妻に心を惹《ひ》かされました。そうしてその妻をいっしょに連れて行く勇気は無論ないのです。妻にすべてを打ち明ける事のできないくらいな私ですから、自分の運命の犠牲《ぎせい》として、妻の天寿《てんじゅ》を奪うなどという手荒《てあら》な所作《しょさ》は、考えてさえ恐ろしかったのです。私に私の宿命がある通り、妻には妻の廻《まわ》り合せがあります、二人を一束《ひとたば》にして火に燻《く》べるのは、無理という点から見ても、痛ましい極端としか私には思えませんでした。
同時に私だけがいなくなった後《あと》の妻を想像してみるといかにも不憫《ふびん》でした。母の死んだ時、これから世の中で頼りにするものは私より外になくなったといった彼女の述懐《じゅっか
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