たと繰り返すだけでした。
その時妻はKの墓を撫《な》でてみて立派だと評していました。その墓は大したものではないのですけれども、私が自分で石屋へ行って見立《みた》てたりした因縁《いんねん》があるので、妻はとくにそういいたかったのでしょう。私はその新しい墓と、新しい私の妻と、それから地面の下に埋《うず》められたKの新しい白骨とを思い比べて、運命の冷罵《れいば》を感ぜずにはいられなかったのです。私はそれ以後決して妻といっしょにKの墓参りをしない事にしました。
五十二
「私の亡友に対するこうした感じはいつまでも続きました。実は私も初めからそれを恐れていたのです。年来の希望であった結婚すら、不安のうちに式を挙げたといえばいえない事もないでしょう。しかし自分で自分の先が見えない人間の事ですから、ことによるとあるいはこれが私の心持を一転して新しい生涯に入《はい》る端緒《いとくち》になるかも知れないとも思ったのです。ところがいよいよ夫として朝夕|妻《さい》と顔を合せてみると、私の果敢《はか》ない希望は手厳しい現実のために脆《もろ》くも破壊されてしまいました。私は妻と顔を合せているうちに
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