すま》に迸《ほとばし》っている血潮を始めて見たのです。
四十九
「私は突然Kの頭を抱《かか》えるように両手で少し持ち上げました。私はKの死顔《しにがお》が一目《ひとめ》見たかったのです。しかし俯伏《うつぶ》しになっている彼の顔を、こうして下から覗《のぞ》き込んだ時、私はすぐその手を放してしまいました。慄《ぞっ》としたばかりではないのです。彼の頭が非常に重たく感ぜられたのです。私は上から今|触《さわ》った冷たい耳と、平生《へいぜい》に変らない五分刈《ごぶがり》の濃い髪の毛を少時《しばらく》眺《なが》めていました。私は少しも泣く気にはなれませんでした。私はただ恐ろしかったのです。そうしてその恐ろしさは、眼の前の光景が官能を刺激《しげき》して起る単調な恐ろしさばかりではありません。私は忽然《こつぜん》と冷たくなったこの友達によって暗示された運命の恐ろしさを深く感じたのです。
私は何の分別《ふんべつ》もなくまた私の室《へや》に帰りました。そうして八畳の中をぐるぐる廻《まわ》り始めました。私の頭は無意味でも当分そうして動いていろと私に命令するのです。私はどうかしなければならないと
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