》かったのです。どこか男らしい気性を具《そな》えた奥さんは、いつ私の事を食卓でKに素《すっ》ぱ抜かないとも限りません。それ以来ことに目立つように思えた私に対するお嬢さんの挙止動作《きょしどうさ》も、Kの心を曇らす不審の種とならないとは断言できません。私は何とかして、私とこの家族との間に成り立った新しい関係を、Kに知らせなければならない位置に立ちました。しかし倫理的に弱点をもっていると、自分で自分を認めている私には、それがまた至難の事のように感ぜられたのです。
私は仕方がないから、奥さんに頼んでKに改めてそういってもらおうかと考えました。無論私のいない時にです。しかしありのままを告げられては、直接と間接の区別があるだけで、面目《めんぼく》のないのに変りはありません。といって、拵《こしら》え事を話してもらおうとすれば、奥さんからその理由を詰問《きつもん》されるに極《きま》っています。もし奥さんにすべての事情を打ち明けて頼むとすれば、私は好んで自分の弱点を自分の愛人とその母親の前に曝《さら》け出さなければなりません。真面目《まじめ》な私には、それが私の未来の信用に関するとしか思われなかった
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