返してみた私は、はっと驚きました。その時の私がもしこの驚きをもって、もう一返《いっぺん》彼の口にした覚悟の内容を公平に見廻《みまわ》したらば、まだよかったかも知れません。悲しい事に私は片眼《めっかち》でした。私はただKがお嬢さんに対して進んで行くという意味にその言葉を解釈しました。果断に富んだ彼の性格が、恋の方面に発揮されるのがすなわち彼の覚悟だろうと一図《いちず》に思い込んでしまったのです。
 私は私にも最後の決断が必要だという声を心の耳で聞きました。私はすぐその声に応じて勇気を振り起しました。私はKより先に、しかもKの知らない間《ま》に、事を運ばなくてはならないと覚悟を極《き》めました。私は黙って機会を覘《ねら》っていました。しかし二日|経《た》っても三日経っても、私はそれを捕《つら》まえる事ができません。私はKのいない時、またお嬢さんの留守な折を待って、奥さんに談判を開こうと考えたのです。しかし片方がいなければ、片方が邪魔をするといった風《ふう》の日ばかり続いて、どうしても「今だ」と思う好都合が出て来てくれないのです。私はいらいらしました。
 一週間の後《のち》私はとうとう堪え切
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