本の若い女は、そんな場合に、相手に気兼《きがね》なく自分の思った通りを遠慮せずに口にするだけの勇気に乏しいものと私は見込んでいたのです。
三十五
「こんな訳で私《わたくし》はどちらの方面へ向っても進む事ができずに立ち竦《すく》んでいました。身体《からだ》の悪い時に午睡《ひるね》などをすると、眼だけ覚《さ》めて周囲のものが判然《はっきり》見えるのに、どうしても手足の動かせない場合がありましょう。私は時としてああいう苦しみを人知れず感じたのです。
その内《うち》年が暮れて春になりました。ある日奥さんがKに歌留多《かるた》をやるから誰《だれ》か友達を連れて来ないかといった事があります。するとKはすぐ友達なぞは一人もないと答えたので、奥さんは驚いてしまいました。なるほどKに友達というほどの友達は一人もなかったのです。往来で会った時|挨拶《あいさつ》をするくらいのものは多少ありましたが、それらだって決して歌留多《かるた》などを取る柄《がら》ではなかったのです。奥さんはそれじゃ私の知ったものでも呼んで来たらどうかといい直しましたが、私も生憎《あいにく》そんな陽気な遊びをする心持にな
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