よりも私の方が強いのですから、私はすぐ応じました。
宅《うち》へ着いた時、奥さんは二人の姿を見て驚きました。二人はただ色が黒くなったばかりでなく、むやみに歩いていたうちに大変|瘠《や》せてしまったのです。奥さんはそれでも丈夫そうになったといって賞《ほ》めてくれるのです。お嬢さんは奥さんの矛盾がおかしいといってまた笑い出しました。旅行前時々腹の立った私も、その時だけは愉快な心持がしました。場合が場合なのと、久しぶりに聞いたせいでしょう。
三十二
「それのみならず私《わたくし》はお嬢さんの態度の少し前と変っているのに気が付きました。久しぶりで旅から帰った私たちが平生《へいぜい》の通り落ち付くまでには、万事について女の手が必要だったのですが、その世話をしてくれる奥さんはとにかく、お嬢さんがすべて私の方を先にして、Kを後廻《あとまわ》しにするように見えたのです。それを露骨にやられては、私も迷惑したかもしれません。場合によってはかえって不快の念さえ起しかねなかったろうと思うのですが、お嬢さんの所作《しょさ》はその点で甚だ要領を得ていたから、私は嬉《うれ》しかったのです。つまりお嬢
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