にそういいました。するとKは足があるから歩くのだと答えました。そうして暑くなると、海に入って行こうといって、どこでも構わず潮《しお》へ漬《つか》りました。その後《あと》をまた強い日で照り付けられるのですから、身体《からだ》が倦怠《だる》くてぐたぐたになりました。

     三十

「こんな風《ふう》にして歩いていると、暑さと疲労とで自然|身体《からだ》の調子が狂って来るものです。もっとも病気とは違います。急に他《ひと》の身体の中へ、自分の霊魂が宿替《やどがえ》をしたような気分になるのです。私《わたくし》は平生《へいぜい》の通りKと口を利《き》きながら、どこかで平生の心持と離れるようになりました。彼に対する親しみも憎しみも、旅中《りょちゅう》限《かぎ》りという特別な性質を帯《お》びる風になったのです。つまり二人は暑さのため、潮《しお》のため、また歩行のため、在来と異なった新しい関係に入る事ができたのでしょう。その時の我々はあたかも道づれになった行商《ぎょうしょう》のようなものでした。いくら話をしてもいつもと違って、頭を使う込み入った問題には触れませんでした。
 我々はこの調子でとうとう
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