んの事をKに打ち明けようと思い立ってから、何遍《なんべん》歯がゆい不快に悩まされたか知れません。私はKの頭のどこか一カ所を突き破って、そこから柔らかい空気を吹き込んでやりたい気がしました。
 あなたがたから見て笑止千万《しょうしせんばん》な事もその時の私には実際大困難だったのです。私は旅先でも宅《うち》にいた時と同じように卑怯《ひきょう》でした。私は始終機会を捕える気でKを観察していながら、変に高踏的な彼の態度をどうする事もできなかったのです。私にいわせると、彼の心臓の周囲は黒い漆《うるし》で重《あつ》く塗り固められたのも同然でした。私の注《そそ》ぎ懸けようとする血潮は、一滴もその心臓の中へは入らないで、悉《ことごと》く弾《はじ》き返されてしまうのです。
 或《あ》る時はあまりKの様子が強くて高いので、私はかえって安心した事もあります。そうして自分の疑いを腹の中で後悔すると共に、同じ腹の中で、Kに詫《わ》びました。詫びながら自分が非常に下等な人間のように見えて、急に厭《いや》な心持になるのです。しかし少時《しばらく》すると、以前の疑いがまた逆戻りをして、強く打ち返して来ます。すべてが疑
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