まっすぐ》に行けば、茶の間、お嬢さんの部屋と二つ続いていて、それを左へ折れると、Kの室、私の室、という間取《まどり》なのですから、どこで誰の声がしたくらいは、久しく厄介《やっかい》になっている私にはよく分るのです。私はすぐ格子を締めました。するとお嬢さんの声もすぐ已《や》みました。私が靴を脱いでいるうち、――私はその時分からハイカラで手数《てかず》のかかる編上《あみあげ》を穿《は》いていたのですが、――私がこごんでその靴紐《くつひも》を解いているうち、Kの部屋では誰の声もしませんでした。私は変に思いました。ことによると、私の疳違《かんちがい》かも知れないと考えたのです。しかし私がいつもの通りKの室を抜けようとして、襖を開けると、そこに二人はちゃんと坐《すわ》っていました。Kは例の通り今帰ったかといいました。お嬢さんも「お帰り」と坐ったままで挨拶しました。私には気のせいかその簡単な挨拶が少し硬《かた》いように聞こえました。どこかで自然を踏み外《はず》しているような調子として、私の鼓膜《こまく》に響いたのです。私はお嬢さんに、奥さんはと尋ねました。私の質問には何の意味もありませんでした。家
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