見ているのは、私に取って何よりも愉快でした。私は最初からそうした目的で事をやり出したのですから、自分の成功に伴う喜悦を感ぜずにはいられなかったのです。私は本人にいわない代りに、奥さんとお嬢さんに自分の思った通りを話しました。二人も満足の様子でした。

     二十六

「Kと私《わたくし》は同じ科におりながら、専攻の学問が違っていましたから、自然出る時や帰る時に遅速がありました。私の方が早ければ、ただ彼の空室《くうしつ》を通り抜けるだけですが、遅いと簡単な挨拶《あいさつ》をして自分の部屋へはいるのを例にしていました。Kはいつもの眼を書物からはなして、襖《ふすま》を開ける私をちょっと見ます。そうしてきっと今帰ったのかといいます。私は何も答えないで点頭《うなず》く事もありますし、あるいはただ「うん」と答えて行き過ぎる場合もあります。
 ある日私は神田《かんだ》に用があって、帰りがいつもよりずっと後《おく》れました。私は急ぎ足に門前まで来て、格子《こうし》をがらりと開けました。それと同時に、私はお嬢さんの声を聞いたのです。声は慥《たし》かにKの室《へや》から出たと思いました。玄関から真直《
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