。私はこういう矛盾な人間なのです。あるいは私の脳髄《のうずい》よりも、私の過去が私を圧迫する結果こんな矛盾な人間に私を変化させるのかも知れません。私はこの点においても充分私の我《が》を認めています。あなたに許してもらわなくてはなりません。
 あなたの手紙、――あなたから来た最後の手紙――を読んだ時、私は悪い事をしたと思いました。それでその意味の返事を出そうかと考えて、筆を執《と》りかけましたが、一行も書かずに已《や》めました。どうせ書くなら、この手紙を書いて上げたかったから、そうしてこの手紙を書くにはまだ時機が少し早過ぎたから、已めにしたのです。私がただ来るに及ばないという簡単な電報を再び打ったのは、それがためです。

     二

「私《わたくし》はそれからこの手紙を書き出しました。平生《へいぜい》筆を持ちつけない私には、自分の思うように、事件なり思想なりが運ばないのが重い苦痛でした。私はもう少しで、あなたに対する私のこの義務を放擲《ほうてき》するところでした。しかしいくら止《よ》そうと思って筆を擱《お》いても、何にもなりませんでした。私は一時間|経《た》たないうちにまた書きたくな
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