た。私の衣食の口、そんなものについて先生が手紙を寄こす気遣《きづか》いはないと、私は初手から信じていた。しかし筆を執《と》ることの嫌いな先生が、どうしてあの事件をこう長く書いて、私に見せる気になったのだろう。先生はなぜ私の上京するまで待っていられないだろう。
「自由が来たから話す。しかしその自由はまた永久に失われなければならない」
 私は心のうちでこう繰り返しながら、その意味を知るに苦しんだ。私は突然不安に襲われた。私はつづいて後《あと》を読もうとした。その時病室の方から、私を呼ぶ大きな兄の声が聞こえた。私はまた驚いて立ち上った。廊下を馳《か》け抜けるようにしてみんなのいる方へ行った。私はいよいよ父の上に最後の瞬間が来たのだと覚悟した。

     十八

 病室にはいつの間にか医者が来ていた。なるべく病人を楽にするという主意からまた浣腸《かんちょう》を試みるところであった。看護婦は昨夜《ゆうべ》の疲れを休めるために別室で寝ていた。慣れない兄は起《た》ってまごまごしていた。私《わたくし》の顔を見ると、「ちょっと手をお貸《か》し」といったまま、自分は席に着いた。私は兄に代って、油紙《あぶ
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