時をちよつとまはつたところだ、そこらを散歩する。
蛙は愛嬌者だが、蟹もなか/\の愛嬌者だ。
大崎の郵便局まで出かける、玉祖神社に参拝。
神域の清らかさ、朝酒臭いのが恥づかしい。
一時の汽車で帰省、味噌と浴衣と小遣とを貰つて、どの駅にも帰宅する遺骨を迎へる人々、また暗涙をそゝられる。
夕方散歩、W店に寄る、K老人が飲んでゐる、いつしよに飲みかはすうちにたうとう寝入り込んでしまつた。
飲仲間[#「飲仲間」に傍点]! 私の仲間、K老人もその一員である。
七月十三日[#「七月十三日」に二重傍線] 雨。
朝飯を御馳走になつて、跣足で戻つた。
昨日の今日[#「昨日の今日」に傍点]で、身心が何となく重苦しい、罰だ、罰は甘んじて受けなければならない。
物資統制、価額[#「額」に「マヽ」の注記]公定、等々で戦時色が日にまし濃厚になる、私もまた日にまし生活の窮迫に苦しむ、だが、物心総動員[#「物心総動員」に傍点]の秋だ、誰でもが頑張らなければならない。
窓にちかく竹の子が枝を葉をひろげる。
どこからともなく、いつからともなく鼠がやつて来て、いたづらをする、鼠よ、食べる物のあるところへ行きなさい!
ポ
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