白い花
種田山頭火

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)石蕗《つわぶき》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)よさ[#「よさ」に傍点]
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 私は木花よりも草花を愛する。春の花より秋の花が好きだ。西洋種はあまり好かない。野草を愛する。

 家のまわりや山野渓谷を歩き廻って、見つかりしだい手あたり放題に雑草を摘んで来て、机上の壺に投げ入れて、それをしみじみ観賞するのである。
 このごろの季節では、蓼、りんどう、コスモス、芒、石蕗《つわぶき》、等々何でもよい、何でもよさ[#「よさ」に傍点]を持っている。
 草は壺に投げ入れたままで、そのままで何ともいえないポーズを表現する。なまじ[#「なまじ」に傍点]手を入れると、入れれば入れるほど悪くなる。
 抛入花はほんとうの抛げ入れでなければならない。そこに流派の見方や個人の一手が加えられると、それは抛入[#「抛入」に傍点]でなくて抛挿[#「抛挿」に傍点]だ。
 摘んで帰ってその草を壺に抛げ入れる。それだけでも草のいのちは歪められる。私はしばしばやはり「野におけ」の嘆息を洩らすのである。

 
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