りで切りあげた。それでも米八合あまり頂戴している。さっそく炊いて食べる。まことに「一鉢千家飯」、涙ぐましくなる。
今日の行乞相はよかったと思う。行乞の功徳はいろいろあるが、行乞していると、自分のことも他人のこともよく解る、我儘がいえなくなる。我儘を許さなくなる。我儘をたたきつぶして、自他本然の真実心を発露せずにはいられなくなる。
九月四日。
宵からぐっすり[#「ぐっすり」に傍点]寝たので早くから眼が覚めて、夜の明けるのが待ち遠しかった。
芋の葉を机上の日田徳利に挿す。其中庵にはふさわしい生花である。
小雨がふりだした。大根を播く。托鉢はやめにして読書に倦けば雑草を観賞する。
夕方、K君がひょっこり来庵、明日から出張する途次を立ち寄ってくれたという。渋茶をすすりながら清談しばらく、それからいっしょにF屋まで出かける。ほどよく飲んで酔うて戻って来たのは十二時近かったろう。
九月五日。
雨、だんだん晴れる。
今日は澄太君が来てくれる日だ。
待つ身はつらいな、立ったり坐ったりそこらまで出て見たり――正午のサイレンが鳴ってから、やっと懐かしい姿が現われた、Iさんといっしょ
前へ
次へ
全3ページ中2ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
種田 山頭火 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング