廿四日[#「四月廿四日」に二重傍線] 曇。

こん/\として眠る。

 四月廿五日[#「四月廿五日」に二重傍線] 曇。

憂欝たへがたいところへ敬君来庵、しばらく話したので多少落ちつけた、ありがたう。
米と油とを買ふ。
古新聞古雑誌ボロをあつめて屑屋に売り払つたら、何と壱円十九銭出来た、これで今月はどうかなるだらう、ありがたしありがたし!
夕方、暮羊居徃訪、一杯よばれる、散歩してさらに一杯、これで今夜はよく睡れさうなものだが。

 四月廿六日[#「四月廿六日」に二重傍線] 晴――曇。

昨夜よく睡れなかつたので身心が重苦しい。
身辺整理する、心内を清掃しよう。
動か静か、――死か生か、――ああ私は迷ふ。
――一切放下着、――無為無念であれ。――
今日も若葉のむかうから、歓呼の歌万歳の声が聞える、私は思はず正坐して合掌した、そして心の奥ふかく、ほんたうにすみませんと叫んだ。……
午後散歩、少し買物をして帰る途上でゆくりなく樹明君に出くわした、ああ樹明君、私はあなたに対して自分の忘恩背徳を恥ぢ入る外はありません。
めづらしい、ほんにめづらしい晩酌! といつても目刺をさかなに焼酎をちびりちび
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