がたいことである。
黎々火君は出張不在、軽い失望、帰途の希望がある。
――一杯また一杯、安い酒、酔はない酒、淋しい酒!
門司駅の待合室で岔水君を待つ、四時、同道して小倉まで。
大朝支社[#「大朝支社」に傍点]参観、深切に案内して下さつた、近代風景[#「近代風景」に傍点]を断片的に鑑賞することが出来た、或るおでんやで飲んで話して、別れた。
電車で、ほろよひ気分で、暮れ方の鏡子居へとびこむ、客来で、私一人で御馳走になる、さすがにをなごや[#「をなごや」に傍点]だけあつて賑やかだ、時々主人公と世間話をしながら、腹いつぱい飲んで食べた、早々ほろ/\になつてぐつたりと寝た、感謝々々。
好い日であつたが、やつぱり私のその日その日は覚めきらない悪夢の断片[#「覚めきらない悪夢の断片」に傍点]といはなければなるな[#「な」に「マヽ」の注記]い。
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・朝のひかりへ播いてをいて旅立つ(アメリカポピー会同人に)
・食べるもの食べつくしたる旅に出る(自分自身に!)
  再録
・春風のどこでも死ねるからだであるく(これも自嘲の一句)
  述懐、冬去春来
・かつえずこごえず冬もほぐれた(別)
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