傍線] 晴曇不明。

朝から飲む、飲む[#「む」に「マヽ」の注記]歩いて、酔つぱらつて、暮れて戻る、こんとんとして[#「こんとんとして」に傍点]何物もなし。
酔中、呂竹居に推参してお悔みを申上げたことは覚えてゐる、――この一事だけがせめてもの殊勝さだ、これで重荷が一つ抜けた。

 一月廿八日[#「一月廿八日」に二重傍線] 雪だつたらしい。

こん/\眠る。

 一月廿九日[#「一月廿九日」に二重傍線] 晴れたり曇つたりしたのだらう。

食べては眠り、眠りては食べ。――
樹明君から呼びに来たけれど行けなかつた。

 一月卅日[#「一月卅日」に二重傍線] 雪。

めづらしく婦人客があつた、樹明君を尋ねて奥さんがやつて来られたのである、悲しい事実ではないか、樹明君よ、奥さんをいたはつてあげたまへ。
夕方、暮羊君しばらくぶりに来庵、一杯やらうといふので、酒と牛肉とを買うて来てくれた、愉快な酒だつた。
私には[#「私には」に傍点]、食べる事飲むことだけが残されてある[#「食べる事飲むことだけが残されてある」に傍点]!

 一月卅一日[#「一月卅一日」に二重傍線] 晴。

霜白く空青し。
旧正月元日。
残つた酒、残つた肴で、めでたしめでたし。

 二月一日[#「二月一日」に二重傍線] 晴、曇、雪。

あゝたへがたし。――
八幡同人諸君の友情をしみ/″\感じる、そして、六日ぶりに床をあげて街へ、ついでに湯田へ、そしてたうとうS屋に泊つてしまつた。

 二月二日[#「二月二日」に二重傍線] 雪。

雪がふるふる、雪はふつても、湯があり、飯があり、酒がある、ありがたいことである、もつたいないことである。
十時帰庵、身心安静。
近来にない楽しい一泊の旅であつた。

 二月三日[#「二月三日」に二重傍線] 薄曇。

節分、宮市の天神様に詣りたいなあ。
餅を焼いて食べつゝ追憶にふけつた。

 二月四日[#「二月四日」に二重傍線] 晴――曇――雨。

立春大吉。
米買ひに街へ出かけて、ついでに一杯。
私がアル中であることは間違はない。
生活必需品と嗜好品との間に微妙な味がある[#「生活必需品と嗜好品との間に微妙な味がある」に傍点]、酒、煙草、新聞、等々。
悲しいかな[#「悲しいかな」に傍点]、身心相食む[#「身心相食む」に傍点]。
夜は招かれて、宿直室に樹明君を訪ねる、食べて飲んで、しやべつ
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