点]。

『身に反みて誠あれば楽これより大なるはなし』(孟子)
[#ここで字下げ終わり]

 八月一日[#「八月一日」に二重傍線] 晴。

早起して散歩した、夏山の朝のよろしさ。
省みて恥多く悔多し[#「省みて恥多く悔多し」に傍点]。
借金ほど嫌なものはない、その嫌なものから、私はいつまでも離れることが出来ない。
午後また散歩、W店でまた一杯。
暑い暑い、うまいうまい、ありがたいありがたい。
モウパツサンを読む、彼の不幸を思ふ。

 八月二日[#「八月二日」に二重傍線] 晴。

けさも早起して散歩。
おちつけ、おちつけ。
身辺整理、といふよりも身心整理[#「身心整理」に傍点]。
ライクロフトの手記を読みなほす、ギツシングと私との間には共通なものがあるらしい。
夜、しみ/″\秋を感じた。
どうやらかうやら私はスランプから抜け出たらしい。
とにかく銭がないことはさみしい、いや、悩ましい、払はなければならないものが払へないのはほんたうに苦しい。

 八月三日[#「八月三日」に二重傍線] 晴。

早起、仰いで雲を観、俯して草を観る。
Sへ。――
汽車賃がないから歩いて行く、樹明君に事情を話して
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