、早く元気になりたまへ、そしていつしよに人生を楽しみませう[#「いつしよに人生を楽しみませう」に傍点]。
今日此頃の私は転身一路の安静[#「転身一路の安静」に傍点]である、人間は、ことに私のやうなものは、落ちるところまで落ちないと落ちつけないらしい。
自分をごまかすな[#「自分をごまかすな」に傍点]、どんな場合でも。
快食は出来る、快眠が出来ない、修行が足らないのだ。
午後は散歩する、M屋に寄つて一杯また一杯(一週間ぶりの酒だけれど、あまりうまくなかつた)、それからついでにK店に寄つてなでしこ[#「なでしこ」に傍点]を借りて帰つた。
酒も煙草もなか/\やめられないが、どうやら酒が水になりさう[#「酒が水になりさう」に傍点]である。
米[#「米」に傍点]と味噌[#「味噌」に傍点]と炭[#「炭」に傍点]と石油[#「石油」に傍点]と、そして本[#「本」に傍点]と、そして酒[#「酒」に傍点]と煙草[#「煙草」に傍点]と、そして。――
新古今を読みつゞけた、その技巧には感服する、しかし私はさういふ歌を作らうとは考へない、やつぱり万葉がよい、そこには掬めども尽きないものがある。
[#ここから1字下げ]
一、社会的自覚 人間として
一、国民的自覚 日本人として
一、個人的自覚 俳人山頭火として
自然と不自然[#「自然と不自然」に傍点]
[#ここから3字下げ]
自然らしい不自然
不自然らしい自然
私の場合
[#ここで字下げ終わり]
十一月廿四日[#「十一月廿四日」に二重傍線] 曇。
寝苦しかつた夜が明けて陰欝な日が来た。
身心整理[#「身心整理」に傍点]。――
みそさゞいが寒さうに啼く、その声は私の声ではあるまいか、私の句はその声のやうなものだらう。
裏山逍遙、あゝ山は美しいと讃嘆しないではゐられなかつた、山はほんたうに美しく装ひしてゐる。
此頃は毎朝、有明の月がさやかである、その月を仰いで、私は昨夜見た夢を恥づかしく思つた。
[#ここから1字下げ]
自問自答(二)
――(生死について)――
『生死を超越したる生死』
[#ここで字下げ終わり]
十一月廿五日[#「十一月廿五日」に二重傍線] 晴。
冬らしい冷たさ、朝寒夜寒であるが。
午前中はうらゝかだつたが、午後はうそ寒かつた。
――ほろびゆくものゝうつくしさ[#「ほろびゆくものゝうつくしさ」に傍
前へ
次へ
全33ページ中20ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
種田 山頭火 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング