したものだつた。

 一月廿三日[#「一月廿三日」に二重傍線] 曇――晴。

田舎餅はうまい/\。
身心沈静、暗愁を感じる。……
今日も蟄居、年賀状を書く。
午後、Kさん来庵、まじめに俳談しばらく。
さびしい夕餉だつた。
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□貧乏して卑しくならない人、苦労して狡猾にならない人はえらいと思ふ。
[#ここで字下げ終わり]

 一月廿四日[#「一月廿四日」に二重傍線] 晴。

午前中は小春日和だつたが、午後は風が出てうそ寒かつた、それにしても大寒とは思へない。
とん/\から/\、前の家で莚を織り通す音もうらゝかだつた。
身辺整理する、――私は此頃何となく労れてゐる、――老いては老を楽しむがよい[#「老いては老を楽しむがよい」に傍点]。
待つものが来ない、苦労性の私は心配しないではゐられない、必ずしもヱゴではない。
午後、Nさん来庵、いつしよにそこらを散歩して、農学校の舎監室にKさんを訪ねる(樹明君は山口出張)、あたゝかいストーブの傍でヨウカンを食べながら話した。
帰途、一杯やりたかつたが――甘いものを食べた後なので殊に――八方塞りで、どうにもならなか
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