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┌自然
│ 人間認識[#「人間認識」に傍点]
└歴史(社会)
(時代)
┌自然 ┌物 ┌有限 ┌存在
└人間 └心 └無限 └実在
観る――認識する――描く、詠ふ、奏でる
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六月十二日[#「六月十二日」に二重傍線] 曇――少雨――晴。
沈静。――
午前、ポストへ、一杯ひつかける、味噌を買ふ、財布には一銭銅貨が二つしか残つてゐない。
梅雨らしく晴曇さだまらず、それでよろしい。
午後、晴れたので散歩、山越えして伊藤さんを訪ねる、幸にして在宅、二時間ばかり話して帰る、小さい壺と、そして白米一升を貰つて(米を無心したときは内心恥ぢ入つた)。
伊藤さんは交れば交るほど味の出てくる人物らしい、私と意気投合するかも知れない(私と同様に独居生活で、そして息子自慢だ、君は外に働きかけんとし、私は内に潜みがちになるが)、とにかくうれしい訪問であつた。
夕方、暮羊君来訪、しばらく話す。
早く寝床に入つたが寝苦しかつた。
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私の場合では、貧乏はむしろ有難い[#「貧乏はむしろ有難い」に傍点]、若し私が貧乏にならなかつたならば、一生、食物のうまさを知らなかつたらうし、また、飲んだくれて早死してしまつたらうから。……
貧楽[#「貧楽」に白三角傍点]である。
※[#二重三角、101−6]私の生活態度を食物の場合で説明すると、――いふところのうまい食物[#「うまい食物」に傍点]でも食べる人間が健全[#「健全」に傍点]でなければ、うまいと味ふことは出来ない、それと同様に、いはゆるまづい物[#「まづい物」に傍点]、いや、うまくない食物[#「うまくない食物」に傍点]でも身心が調うてゐれば[#「身心が調うてゐれば」に傍点]、おいしく、ありがたく味ふことが出来る、――それが人生の味[#「人生の味」に傍点]だ。
与ふれば与へらる[#「与ふれば与へらる」に傍点]、捨てると拾はせられる。
すること[#「すること」に傍点]はさすこと[#「さすこと」に傍点]となつてかへつてくる。
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――行乞僧の言葉 ┌なる
└する
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六月十三日[#「六月十三日」に二重傍線] 晴――曇。
旧端午、日曜、日々好日だけれど、今日は好日中の好日だ、誰かお団子をくれないかな。
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