を彷徨したものだつた」に傍点]。
断――空――暗――明――黙
五月十九日[#「五月十九日」に二重傍線] 廿日[#「廿日」に二重傍線] 廿一日[#「廿一日」に二重傍線] 廿二日[#「廿二日」に二重傍線]
老いてます/\醜し[#「老いてます/\醜し」に傍点]。
五月廿三日[#「五月廿三日」に二重傍線] 曇――雨。
早起、身辺整理。
無、無、空、空。――
午後、樹明君来てくれて酒を買うてくれる、ありがたい、ほろ酔機嫌で湯田へ行く、ほんに温泉は身心をしづめてくれる、ありがたい。
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┌つゝましく、くよ/\せずに
└すなほに、けち/\せずに
[#ここで字下げ終わり]
五月廿四日[#「五月廿四日」に二重傍線] 雨。
バス代がないから(昨夜はY店の主人に切手を銭にかへて貰つて宿料を払ふたのだが)はだしで歩いて戻つた、よかつた。
斎藤さんから近著東洋人の旅[#「東洋人の旅」に傍点]が来てゐた、さつそく読み初めた。
五月廿五日[#「五月廿五日」に二重傍線] 晴。
終日読書。
新緑がいよ/\うつくしい、鶯がよい声でうたふ。
東洋人の旅[#「東洋人の旅」に傍点]はなつかしい読物だつた、著者と膝を交へて語るやうな親しさを味つた、フインランドの旅、アイルランドの旅が殊によいと思ふ。
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澄めば濁り、濁ればまた澄む。
明暗の境
澄みきれ[#「澄みきれ」に傍点]
合掌[#「合掌」に白三角傍点]――無我[#「無我」に白三角傍点]
[#ここで字下げ終わり]
五月廿六日[#「五月廿六日」に二重傍線] 曇。
いつものやうにきちんとKから送金、ありがたいぞ。
買物いろ/\、払へるだけ払ひ、買へるだけ買ふ。
また湯田へ。――
五月廿七日[#「五月廿七日」に二重傍線] 曇。
滞在。
酔うてゐる、落ちついてゐる。……
五月廿八日[#「五月廿八日」に二重傍線] 曇。
今日も歩いて帰庵。
五月廿九日[#「五月廿九日」に二重傍線] 晴。
Nさん来訪、しばらく話してから、いつしよに米屋まで出かける、M店でちよいと一杯ひつかけました。
身心沈静、落ちついて読む。
投げだせ、投げだせ、投げだすより外に私の助かるみちはない。
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□枯淡な句と幼稚な句とは一見して同一なものゝやうに思はれる、その距離
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