、堤さん、星城子君来訪。
日本娘のよろしさ。

 三月十日[#「三月十日」に二重傍線] 曇。

陸軍記念日。
おなじく。

 三月十一日[#「三月十一日」に二重傍線] 風雨。

鏡子君自慢の腕をふるつて記念写真撮影。
来訪者いろ/\。
更けて、来訪の星城子君に連れられて同氏宅へ。

 三月十二日[#「三月十二日」に二重傍線] 曇。

朝湯朝酒。
桜咲く前の荒生田公園風景、その中の一人として山頭火登場。
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三月九日の記事最後の分はここに。――
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 三月十三日[#「三月十三日」に二重傍線] 晴。

雲平居。
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見おろす山から春めいた煙
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雲平君夫妻の優待に身心をまかせる。
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草青むところよい妻とよい子と
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おのれを恥ぢるばかりである。

 三月十四日[#「三月十四日」に二重傍線] 曇。

雲平居。

 三月十五日[#「三月十五日」に二重傍線] 曇。

おなじく。
読書、執筆、揮毫。

 三月十六日[#「三月十六日」に二重傍線] 晴。

雲平居。
夜は菫雨居の海峡句会へ出席する。
俊和尚同宿。

 三月十七日[#「三月十七日」に二重傍線]

へうぜんとして直方へ飯塚へ、そしてKのところへ。
初めてSに面会する、まことに異様な初対面ではあつた!
父父たらずして子子たり、悩ましいかな苦しいかな。

 三月十八日[#「三月十八日」に二重傍線] 曇――晴。

緑平居へ転げ込む。――
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ボタ山なつかしく草萌ゆる
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 三月十九日[#「三月十九日」に二重傍線] 雨。

雀、鶯、草、雲。……
愛憎なし恩怨なし、そしてそして、――愚!
若松へ、多君を煩はして熊本へ。
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逢うて別れてさくらのつぼみ
いつまた逢へるやら雀のおしやべり
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熊本駅で一夜を明かす。

 三月廿日[#「三月廿日」に二重傍線] 晴。

朝、彼女を訪ねる、子に対する不平、嫁についての不腹[#「腹」に「マヽ」の注記]を聞かされる、無理はないと思ふけれど、私は必ずしもさうとは思はない、それは多分に人間(女)の嫉妬がまじつてゐる。

 三月廿一日[#「三月廿一日」に二重傍線] 晴。

酒、酒、酒、歩
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