、極上焼酎を買ふ、とても強烈でヂン以上だ。
今日から湯田競馬、フアンといふよりも慾張連中が新国道を自動車で狂奔する。
私はゆうぜんとして飲み、とうぜんとして酔ふ。
火酒の味!
樹明君から来信、今夜は宿直だから久しぶりにゆつくり飲まうといふ、暮れてから出かける、鶏肉はうまかつた、IさんJさんも仲間入する。
ほろ/\とろ/\、そのまゝ泊る、昨夜ねむれなかつたので、今夜はよくねむれた。
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「いかに酔ふか」も緊急事だけれど「何に酔ふか」が最初の問題だ。
酒に酔ふか、よろしい、飲みなさい、恋に酔ふか、よろしい、可愛がりなさい。
銭がありますか、女がゐますかよ、よろしい、よろしい。
泥沼を歩きなさい、そして死んでしまへ!
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九月十一日[#「九月十一日」に二重傍線] 曇。
朝飯をよばれてから帰る。
雷雨、痛快だつた。
ある手紙、それは予期しないではなかつたが、やつぱりかなしいさびしいものであつた。
腹工合がよくない、昨夜の食べ過ぎがたゝるのである、過ぎたるは及ばざるに如かず、まつたくその通り。
夜は例の如き彷徨[#「彷徨」に傍点]、有金全部をはたいた、壱円三十九銭也。
ぼろ/\どろ/\、戻つたのは夜明前だつた、こゝしばらくは謹慎の事。
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山頭火を笑ふ
人生の浪費者だよ。
悪辣はないが愚劣はありすぎる。
くよくよするな。
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九月十二日[#「九月十二日」に二重傍線] 晴。
茫々漠々、空々寂々。
昨夜は放楽デー、今日は放心日。
朝、裏口の戸をあけると、蛇がとびだした、私も驚いたが彼も驚いたらしい。
生疵が痛い、昨夜の記念だ。
私の心臓はなか/\強い(文字通りに)。
夜、Nさん来庵、先夜の酔中散歩の事など笑[#「笑」に白丸傍点]し合つて笑ふ。……
近頃また夢を見るやうになつた。
九月十三日[#「九月十三日」に二重傍線] 晴。
今日はまつたくぐうたら山頭火[#「ぐうたら山頭火」に傍点]だつた。
午近くKさん来庵、焼酎を舐めながら雑談、かうして余生をむさぼることは苦しい。
九月十四日[#「九月十四日」に二重傍線] 曇、時々雨。
早起、そしてそれから。――
銭がない、米もなくなつた。
頼まれた短冊を書いて送るべく、学校に樹明君を訪ねて郵税を借りる、酒代を貰ふ、夕方訪ねようと
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