あらう、人間に釣りあげられるから)。
樹明来、さつそく飲む、下物は焼小鯛、玉葱のぬた、黒[#「黒」に「マヽ」の注記]布の佃煮、いづれも庵独特の手料理。
急用ができて樹明君は早々帰つて行つた、奥さんがわざ/\迎へに来られたので何とも致し方がない。
夜、冬村君が約束通りに餅をたくさん持つてきてくれた、ありがたい、此頃の私は酒を貰ふよりも、銭を貰ふよりも、餅を貰ふことがうれしい、それほど私は餅好きになり、餅ばかりたべてゐるのである、近くまた樹明君も持つてきてくれるといふ、うれしいな!
※[#二重四角、277−14]飯の味[#「飯の味」に傍点]、酒の味[#「酒の味」に傍点]、水の味[#「水の味」に傍点]、そして餅の味[#「餅の味」に傍点]、つぎは茶の味[#「茶の味」に傍点]か。……
[#ここから2字下げ]
・ひとりであたゝかく餅ばかり食べてゐる
・足音が来てそのまゝ去つてしまつた落葉
・今日のをはりのサイレンのリズムで
・けふも雪もよひの、こんなに餅をもらうてゐる
・星空冴えてくる寒行の大[#「大」に「マヽ」の注記]鼓うちだした
[#ここで字下げ終わり]

 二月四日[#「二月四日」に二重傍線
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