ろく[#「何を為てもおもしろく」に傍点]、何を見てもたのしく[#「何を見てもたのしく」に傍点]、何を聞いてもたのしく[#「何を聞いてもたのしく」に傍点]。
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九月廿三日[#「九月廿三日」に二重傍線] 曇、秋冷、野分らしく吹く。
朝から寝ころんで漫読とはゼイタクな!
午後は魚釣とはまたゼイタクな。
小沙魚六つ、ゴリ五つ、いつものやうにあまり釣れない、あまり釣らうとも思はないが。
早々帰庵して、不運な彼等を火焙りにして(私としては荼毘に附して、といつた方がよからう)、一杯やつた。
今日はうれしや晩酌がある[#「今日はうれしや晩酌がある」に傍点]、――何と其中庵の山頭火にふさはしい幸福ではないか。
それから(このそれから[#「それから」に傍点]がちつとばかりよくなかつたが)、駅のポストまで、それからY屋へ、M店へ、F屋へ、等々で飲み過ぎた(つまり、多々楼君の温情を飲んだ訳である、貨幣として八十銭!)。
飲み過ぎて歩けないから、無賃ホテル(駅の待合室)のベンチで休息した、戻つたのは夜明近かつた。
山頭火万歳!
九月廿四日[#「九月廿四日」に二重傍線] 暴風雨。
今日は彼岸の中日だが、これではお寺参りも出来まい、鐘の音はちぎれて鳴るが。
昨日、魚釣の帰途、採つて戻つた紫苑男[#「男」に「マヽ」の注記]郎花を活ける、やつぱり秋の草花[#「秋の草花」に傍点]だな。
午後、風雨の中をSさん来訪、酒持参で、つゞいて樹明君来庵、豆腐と野菜と魚とを持参して、御馳走、御馳走、ちり[#「ちり」に傍点]はうまいな、ほどよく酔うて夕方解散。
少々飲み過ぎ食べ過ぎたやうだ。
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・風ふく萩はゆれつつ咲いて
・藪風ふきつのる窓の明暗(関)
・風を聴く鳴きやめない虫はゐる
雨ふるなんぼ障子をたゝいてもはゐ[#「ゐ」に「マヽ」の注記]れない虫で
病中
そこらまできて鉦たゝき
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九月廿五日[#「九月廿五日」に二重傍線] 曇、雨、晴。
ありがたや朝酒がある(昨日のおあまり)。
ほろ酔の眼に、咲きこぼれた萩が殊にうつくしい。
買物いろ/\――
米(これは借)、石油十銭、餅十銭、魚十銭。
やうやくにして晴れた空を仰ぎ、身心のおとろへを覚えた、これでは行乞の旅も覚束ない。
夕方、Nさんといふ青年来訪、しばらく漫談した、いつぞや酔中F喫茶店で出逢つた人である。
寝苦しかつた、妙な夢を見た。
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・花のこぼるゝ萩をおこしてやる
・野分あしたどこかで家を建てる音
・からりと晴れて韮の花にもてふてふ
・歩けるだけ歩く水音の遠く近く
・燃えつくしたるこゝろさびしく曼珠沙華
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九月廿六日[#「九月廿六日」に二重傍線] 晴、時々曇つてはしぐれる。
朝寝した、寝床から出ないうちに六時のサイレンが鳴つた。
午後、近在を散歩する、三里ぐらゐは歩いたらう、途中で、軽い狭心症的発作が起つた。
帰つてくると、誰やら来てゐる、昨日の中村君だ、縁側で文芸談、等々。
花めうが[#「花めうが」に傍点](?)が最初の花をつけた、まことに清楚なすがたである、これをわざ/\持つてきて植ゑてくれた黎坊に報告して喜ばせなければなるまい(一昨春)。
気取るな[#「気取るな」に傍点]、気構へを捨てろ[#「気構へを捨てろ」に傍点]!
夜中、行李から冬物をとりだすとき、油虫七匹ほどたゝき殺した、そしてそれが気になつて、とりとめもない事を考へつゞけた、何といふ弱虫だ、私は油虫よりも弱い。
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・咲きつづく彼岸花みんな首を斬られてゐる
うつくしい着物を干しならべ秋晴れ
・百舌鳥が鋭くなつてアンテナのてつぺん
・風のつめたくうらがへる草の葉
・秋晴れて草の葉のかげ
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九月廿七日[#「九月廿七日」に二重傍線] 晴。
朝寒、米磨ぐ水がやゝつめたく、汲みあげる水がほのかにあたゝかい。
夏物をしまうて冬物をだす、といつたところでボロ二三枚だが。
今日も午後は近在散策。
過去をして過去を葬らしめる[#「過去をして過去を葬らしめる」に傍点]、――それが観念としてでなく体験としてあらはれてきた[#「それが観念としてでなく体験としてあらはれてきた」に傍点]。
夕方、樹明君が酒と肴とを奢ることになつて用意してゐると、敬君がまた酒と肴とを持つて来た、三人楽しく飲み且つ語る、過去の物語が賑つた、十時近くなつて快く散会、近来うれしい会合だつた、ぐつすり前後不覚の睡眠がめぐまれた。
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其中漫筆
□こんにやく[#「こんにやく」に傍点]といふもの
(豆腐に対比して)
□物事をアテにすることは、あんまりよくない
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