]、生活することだ[#「生活することだ」に傍点]。
俳句する心が、私の生きてゐる泉である。
□遊ぶ[#「遊ぶ」に傍点]――道に遊ぶ、芸に遊ぶ、句に遊ぶ、酒に遊ぶ、――童心にして老心。
□鼠、歯、餅、飯、水、酒、虫、花。
鼠もゐない家、歯のない人間、餅と日本人。
[#ここで字下げ終わり]
二月二十五日[#「二月二十五日」に二重傍線] 晴。
……みだれてしまつた、自己統制をなくしてしまつた、あてもなく歩いた。……
二月廿六日[#「二月廿六日」に二重傍線] 雨。
身心疲労たへがたし。
二月二十七日[#「二月二十七日」に二重傍線] 曇、晴。
終日終夜、悶え通した。
二月二十八日[#「二月二十八日」に二重傍線] 晴れたり曇つたり。
ぢつとしてゐるにたへなくて、街に出て宿屋に泊つた、そしてやつと安静をえた、近在散歩。
三月一日[#「三月一日」に二重傍線] 春日和、もう虫が出て飛ぶ。
散歩、歩いてゐると何となく慰められる。
[#ここから2字下げ]
・大石小石ごろ/\として春
夜露もしつとり春であります
・春夜は汽車の遠ざかる音も
・もう郵便がくるころの陽が芽ぶく木々
・風がほどよく春めいた藪から藪へ
・春風のローラーがいつたりきたり
・伐り残されて芽ぶく木でたゝへた水へ
[#ここで字下げ終わり]
三月二日[#「三月二日」に二重傍線] 晴。
今夜は呂竹居に泊めて貰つた、なごやかな家庭の空気がいら/\してゐる私をやはらかくつつむ、ありがたい、まことにありがたい。
三月三日[#「三月三日」に二重傍線] 四日 五日 六日
寝てゐた、寝てゐるより外に仕方がない。
三月七日[#「三月七日」に二重傍線] 晴。
やつと起きあがつて、句集発送。
夜半の闖入者としてK君、I君襲来。
三月八日[#「三月八日」に二重傍線]
春が来たことをしみ/″\感じる。
身辺整理。
机を南縁から北窓へうつす、これも気分転換の一法である。
在るがままに在らしめ[#「在るがままに在らしめ」に傍点]、成るがままに成らしめる[#「成るがままに成らしめる」に傍点]、それが私の心境でなければならない。
[#ここから2字下げ]
・山火事も春らしいけむりひろがる
・ぬくうてあるけば椿ぽたぽた
・草へ草が、いつとなく春になつて
[#ここで字下げ終わり]
三月九日[#「三月
前へ
次へ
全93ページ中18ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
種田 山頭火 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング