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   (其中漫筆)
     続酔心
泥酔の世界から微酔の境地へ

┌個性 ┌特殊的 ┌芸術
│   │    │文芸
│   │    │短歌
└社会性└普遍的 └俳句

日本詩[#「日本詩」に傍点]

      ┌音声 ┌定型
言語の成分 │意想 │季題
      └文字 └切字
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 十月四日[#「十月四日」に二重傍線] 秋晴。

めづらしくも朝寝、寝床へ日がさしこむまで。
天地一枚[#「天地一枚」に傍点]といふ感じ、ほんたうに好い季節である。
私にだけ層雲[#「層雲」に傍点]が来ない、何となく淋しい。
昨夜の今朝で、こゝろうつろのやうな。
佐野の妹を訪ねようかとも思つたが、着物の質受が出来ないので果さない、床屋で気分をさつぱりさせて貰ふ。
菜葉一把三銭也、新漬として毎朝の食膳をゆたかにしてくれる。
暮れるころ、樹明君来庵、お土産は酒と魚と、そして原稿紙。
愉快に談笑して十時頃にさよならさよなら。
私がいつものやうに飲めなくて気の毒だつた、御飯を食べてゐたから。
松茸ちり[#「松茸ちり」に傍点]が食べたいな、焼松茸は昨夜たくさん食べたけれど。――
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   (伊ヱ遂に開戦)
・秋空たかく号外を読みあげては走る
・日向あたゝかくもう死ぬる蝿となり
・朝風の柿の葉のおちるかげ
・月夜のみみずみんな逃げてしまつた(釣餌)
・いま汲んできた水にもう柿落葉
・燃えつくしたる曼珠沙華さみしく(改作)
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 十月五日[#「十月五日」に二重傍線] 秋晴。

自然も人間もおだやかに。――
朝酒(昨夜のおあまりで)、ゼイタクすぎる。
柿をもぐ人がちらほら、Jさんも柿もぎにきた、そして熟柿[#「熟柿」に傍点]をくれた、あゝ熟柿! 老祖母の哀しい追憶がまたよみがへつて私を涙ぐませる。
まだおあまりがあつて晩酌、そしてそのまゝぐつすり。
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・考へてゐる身にか[#「にか」に「マヽ」の注記]く百舌鳥のするどく
・太陽のぬくもりの熟柿のあまさをすゝる
・てふてふたかくはとべなくなつた草の穂
・昼も虫なく誰を待つともなく待つ
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 十月六日[#「十月六日」に二重傍線] 晴、朝寒。

今朝もおあまりで朝酒。
天いよ/\高く地ます/\広し。
黎々火君が層雲[#「
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