生」に傍点]。
或る時は仏にちかく、或る時は鬼にひとしい。
自分のうちに動物を見出すことはかなしい。
やつと夜が明けた、朝日がよかつた。
油虫め、食べるものがないから、本をなめマツチをかぢる、そして花までたべる、気の毒と思はないではないけれど、食べ物を与へる気にはなれない、油虫よりも蝿や蚊の方がよい、蛇よりも嫌な油虫だ。
今日も身辺整理、いつ死んでもよい用意をして置かなければならない、遺書も書きかへなければならない。……
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・風がすゞしく吹きぬけるので蜂もてふてふも
・死ねる薬をまへにしてつく/\ぼうし
・草の青さをしみじみ生き伸びてゐる
・住みなれて草だらけ
・のぼる陽をまつ糸瓜の花とわたくしと
・さらりと明けてゐるへちまのはな
・朝月はすずしいいろの桔梗がひらく
炎天のヱンジンのまはるとゞろき
・なんとかかんとか蝿もつれてきて
・こゝろむなしくて糸瓜咲く
炎天、はてもなくさまよふ
・炎天、否定したり肯定したり
・右は海へ左は山へ木槿咲いてゐる
ひとりしんみりとゐてかびだらけ
・なんと朝酒はうまい糸瓜の花
・炎天ぶらりと糸瓜がならんで
・ゆく手とほく雲
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