執着を捨てて、自然観照の詩に沈潜する外はない。……
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・凩の、大きな日の丸がはためく
・こんなにも弱つてしまつた落葉ふむさへ
・早う寝るとして寒月ののぼるところ
・生きてゐることがうれしい水をくむ
・こんなに痩せてくる手をあはせても
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十二月廿五日[#「十二月廿五日」に二重傍線] 晴。
何とうらゝかなお天気、そして何と衰へた私。
庵はよいかな、日光はありがたいかな、小鳥のうたはよろしいかな。
心しづかにして香を※[#「火+主」、第3水準1−87−40]く、からだが弱つてゐる、香煎をすゝる、読むに本あり、思ふて懐かしい友あり。
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三八九[#「三八九」に傍点]復活準備。
真理[#「真理」に傍点]創刊号を読む、私のやうなものでもその運動に参加したいほどの衝動を感じた。……
孤立は無論ウソだ、対立もウソだ、やつぱり私達は相互依存[#「相互依存」に傍点]でなければならない、自覚的に、意識的に。
○今年も暮れようとしてゐる、今年はいろんな意味で苦しんだ年だつた、たしかに私の身心の転換期[#「私の身心の転換期」に傍点]であつた、肉体がます/\弱く、心はいよ/\澄んで。
抱壺句集[#「抱壺句集」に傍点]が来た、抱壺君からの来信もうれしかつた、三羽の鶴[#「三羽の鶴」に傍点]の出現はほんたうによろこばしい。
農学校に樹明君を訪ねて話してゐるとき、思ひがけなく周二君来訪、三人いつしよに帰庵して会飲、そして珍客芝川君を迎へた、意外であつたゞけ会合のよろこびは二乗された、千福の酔心地、広島牡蠣のうまさ、そのうまさも二重だつた。
みんないつしよに駅まで、芝川君は長崎へ、周二君は山口へ、樹明君は家へ、そして私は庵へ。
また飲みすぎ食べすぎで工合がよくなかつたが、ぐつすり眠れたのは幸福だつた。
何も食べたくないが、梅干[#「梅干」に傍点]はよろしい、酒は飲みたくないけれど生水[#「生水」に傍点]はうまい!
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・ことしも暮れるお墓を掃除する
周二君に
・けふはよばれてゆきますガソリンカーで
・年の市のお猿さんやたらに踊らされてゐる
・こゝろなぐさまずこゝまで来たが冬されの水
湯田温泉
・わいてたたへてあふれる湯の惜しむところなく
・ぼんやり観てゐる冬山のかさなれるかたち
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十二月廿六日[#「十二月廿六日」に二重傍線] 晴、冬ぐもり、晴。
食慾がない、昨日の酒がまだ一升残つてゐるのに飲みたくない、弱くなるときにはかうも弱くなるものかと嘆きたくなる。……
午後、約束通りに山口の周二居へ出かける、君の入営送別句会を催ほすといふのである、句会といつたところで、家族の方々と会談して名残を惜しまうといふのである。
途中湯田温泉に浸る、飯蒸器を買ふ、温泉はよいかな、そして飯蒸器はありがたいかな(こんな器具でも手持のそれとの間にはいろ/\改良された個所がある、日進月歩といへば大袈裟だらうけれど、時々刻々進んでゆきつゝある時代を感じないではゐられない)。
糸米あたりの山々を眺めては休む、周二居についたのは五時前、酒はお断りしてライスカレーを頂戴する、暮れて樹明君も来会、奥さんやお嬢さん方もいつしよに句作する、そして最後は御馳走になる、まことにしめやかな会合ではあつた、私も甘やかされて健の話をした、息子自慢が出来るオヤヂではないのに! やうやく最終のバスで帰庵した、折からの月がまともに庵いつぱいのひかり、寝るには惜しいやうだつたが、ぐつすりねむれた。
人の情[#「人の情」に傍点]にうたる私[#「る私」に「マヽ」の注記]だつた!
今夜、周二居で、壺に※[#「插」でつくりの縦棒が下に突き抜けている、第4水準2−13−28]してあつた寒菊の白さがいつまでも眼に残つた。
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・こんなところに師走いそがしい家が建つ
・枯れつくして芭蕉葉は鳴る夜の片隅
・遠く鳥のわたりゆくすがたを見おくる
・寝しな水のむ山の端に星一つ
・あすはお正月の御飯をあたゝめてひとり
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十二月廿七日[#「十二月廿七日」に二重傍線] 晴、曇。
霜が降つて氷が結んでゐる、冬の厳粛[#「冬の厳粛」に傍点]を感じる。
当分、酒を断つてぢつとしてゐよう、さうするより外ない私となつたから。
今日はポストまで出かける気力もなかつた。
庵中独坐、こゝろおのづから澄む[#「こゝろおのづから澄む」に傍点]。
今日の食物――うどん一玉、ぬくめ飯一碗、香煎一杯、餅二つ、饅頭三つ!
酒が飲めなくなつて菓子がうまくなる、木の実[#「木の実」に傍点]を味ふ、酒の執着がなくなつて貪る心[#「貪る心」に傍点]もなくなつ
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